この記事は後編です。
▼前編の「白血球増加症」について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
白血球が増える病気と減る病気(前編・白血球増加症)
執筆・監修
新潟県けんこう財団 新潟健診プラザ 診療部長
新潟大学名誉教授
高橋 益廣
白血球減少症
白血球減少症は、白血球数が基準値以下に減少した状態の総称ですが、その境界線は3,000/μl以下が一般的とされています。臨床的には、白血球増加症の場合と同様に白血球全体の数よりは、どの白血球分画の絶対数が減少しているかが問題となります。最も多いのは好中球の減少で、細菌等に感染しやすくなるため臨床的にも重要です。以下減少している白血球の種類別に、その原因となる主な病気について説明します。
白血球減少症の主な原因
■好中球減少症(<1,500/μl)
① 感染症
・ウイルス性:麻疹、風疹、エイズなど
・細菌性:腸チフスなど
② 血液疾患
・無顆粒球症
・造血器腫瘍:急性白血病、多発性骨髄腫など
・貧血:再生不良性貧血、発作性夜間血色素尿症、巨赤芽球性貧血など
③ 脾機能亢進症:肝硬変、特発性門脈圧亢進症など
④ 免疫性:全身性エリテマトーデス、 自己免疫性好中球減少症など
⑤ その他:周期性好中球減少症、慢性特発性好中球減少症
■好酸球減少症
① 急性感染症:腸チフスなど
② クッシング症候群、副腎皮質ステロイド投与後
③ ストレス
■リンパ球減少症(<1,000/μl)
① 悪性腫瘍:悪性リンパ腫など
② 薬剤投与後:副腎皮質ステロイド、シクロスポリン、抗癌剤など
③ ウイルス性:エイズなど
1.好中球減少症
好中球の絶対数が減少する病気で、1,500/μl以下とされています。好中球が減少すると、その原因にかかわらず感染症にかかりやすくなります。
(1)感染症
細菌性では、腸チフスが例外的に好中球減少症を示します。まれに、粟粒結核(結核菌が血液を介していくつかの臓器に運ばれ病巣をつくる重症結核症)でみられることがあります。ウイルス性では、一般的にリンパ球が増加し、好中球は減少します。
(2)無顆粒球症
抗甲状腺薬、抗菌薬など薬剤によって高度な好中球減少が急激に起こり、高熱、口腔内潰瘍などの症状が出現し、敗血症(血液中に病原体が入り込み、重篤な全身症状をきたす病態)などの重症感染症をひき起こす病気です。再生不良性貧血と異なり、貧血や血小板減少など顆粒球以外の異常はほとんどみられません。
(3)造血器腫瘍
白血球の悪性腫瘍である急性白血病や多発性骨髄腫などでは、腫瘍細胞が骨髄を占拠して正常な好中球の産生が低下するために、好中球減少症がおこります。白血病細胞から正常造血を抑制する因子が産生されることも要因と考えられています。
(4)貧血
再生不良性貧血、巨赤芽球性貧血、発作性夜間血色素尿症などの貧血では、好中球だけでなく、血球3系統が減少する汎血球減少症を示します。また、抗癌剤治療による骨髄抑制の結果、汎血球減少症を来すことがしばしばみられます。
(5)脾機能亢進症
肝硬変や特発性門脈圧亢進症などの脾腫のある病気では、脾で血球3系統が抑留あるいは破壊されて汎血球減少症を呈します。
(6)免疫性好中球減少症
全身性エリテマトーデスや自己免疫性好中球減少症は、好中球自己抗体等の異常免疫反応により好中球が破壊され好中球減少症をきたします。
(7)その他
周期性好中球減少症は遺伝性の病気で、3~4週ごとに好中球が減少し、100/μl以下となりますが、3~5日で回復する病気です。その他に、周期性のない先天性好中球減少症もあります。
2.好酸球減少症
急性感染症の中で、特に腸チフスの初期には好酸球がほとんど消失するのが特徴とされています。クッシング症候群、副腎皮質ステロイド投与後およびストレス時にも減少します。
3.リンパ球減少症
リンパ球の絶対数1,000/μl以下をリンパ球減少症とするのが一般的です。悪性リンパ腫などの悪性腫瘍、エイズなどの免疫不全症、また副腎皮質ステロイドや 各種の抗癌剤投与時などにリンパ球減少症をきたします。免疫反応を担うリンパ球が減少することにより、免疫不全となり感染症にかかりやすくなります。
4.汎血球減少症
汎血球減少症については既に述べましたが、赤血球、白血球および血小板の3系統の血球が同時に減少します。汎血球減少症を示す主な病気について、その成因別に以下の表に示してあります。
汎血球減少症の主な成因
■血球産生不全によるもの
① 再生不良性貧血:特発性、薬剤性(抗癌剤など)
② 骨髄内での腫瘍細胞の増殖:がんの骨髄転移、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、急性白血病の一部 (非白血性白血病)、など
③ ビタミンや葉酸の欠乏:巨赤芽球性貧血
■血球崩壊または貯留の亢進によるもの
① 脾機能亢進症:特発性門脈圧亢進症、肝硬変など
② 発作性夜間血色素尿症
③ 全身性エリテマトーデス
おわりに
白血球の増加や減少を指摘された場合、各種感染症や炎症性疾患、アレルギー、それに薬剤投与などの原因がはっきりしていれば、それぞれの担当科で原因疾患の治療を行います。原因疾患がはっきりしていない場合は、白血病や再生不良性貧血などの重篤な疾患である可能性もありますので、血液専門医への受診が必要となります。しかし、病気が存在しない場合でも、白血球数が基準範囲から外れる人や、採血時の状態により基準範囲に入ったり外れたりする人もいます。運動、ストレス、妊娠などにより白血球が増えることもあるため、白血球の増加が必ずしも病気ではないこともあります。また、白血球数として多少減少していても、好中球、リンパ球、単球等の白血球分画のバランスが正常である場合は、白血球数の減少自体異常ととらえる必要のないこともあります。
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